熟成すると脂がまわる??

熟成すると脂がまわる??

魚を適切に処理、熟成して食す際に、見た目・味共に「脂がまわった」と感じられます。津本式を実践された方はそう実感されている方も多いのではないでしょうか?


今回のブログではその「脂がまわる」と感じる現象について考察したいと思います。





仮説① 熟成により物理的に脂が魚体内に広がる?

仮説② 糖新生などにより脂質が増える?

仮説③ 熟成により脂の旨みを感じやすくなる?

 ・熟成により旨み成分が増加し、脂との旨みの相乗効果?

 ・筋肉を構成している成分の脆弱化により、咀嚼によって脂とうまみ成分が混ざりやすい?

 ・熟成により、脂自体の旨みが増す(脂も変化する?)


考察するうえでポイントとなる事例

「マグロの赤身は、熟成しても脂はまわらない」

→脂が物理的に広がることはない(仮説①は否定的)

→筋肉(タンパク質)が脂肪に変換されることはない(仮説②は否定的)

(より長期熟成されている牛肉の場合も同様)



結論


脂が増えたり移動することはないと考えられる。

様々な要因で、熟成によって脂も含めた旨みが増すことが本質である可能性が高い。

仮説③の詳細は、検討が必要だがこれ以上の考察は難しそう



では、なぜ脂がまわると感じてしまうのか?



刺身にしたときに切断面に脂がのっているように見えるのは?


皮下の脂肪が包丁に付着し、刺身の切断面に付着しただけ?そもそも熟成により旨みが増す魚は皮下に脂肪が多いことが要因として考えられる。



背身にも脂がまわった?


絞めた直後でも背身(主に皮下)に元々脂が多い魚である可能性が高い。熟成によって旨みが増すことにより、脂が回ったと誤認している可能性が考えられる。



腹身は熟成早期から旨みが強いのに、背身は熟成しないと旨みが増さないのは?


腹身は、身が薄く、空気に触れやすい(表面積が広い)・腹腔内の酵素に曝されやすい、などの理由により熟成スピード(腐敗スピード)が早い(酵素が働きやすい)から?

脂が筋間に多い(霜降りを想像してください)かつ、脂分が多いため、咀嚼時に筋肉と混ざりやすく旨みを感じやすい?

脂肪も熟成により旨みが増すと仮定して、脂肪の旨み増加は筋肉の旨み増加よりも早く、脂の多い腹身は早期から旨い?



脂が旨い?



油脂は無味無臭であり、舌で旨みを感じない。

しかし、食品に油脂が添加されると、人はおいしいと感じるようになることも事実である(野菜炒めなどの炒め物、霜降りの肉など)。

油脂の味わいは、その他の味覚とは異なる種類である事がわかっている

油脂は高エネルギー源であると人間の体は感知し、油脂を食べていると脳が気付いたら、もっと油脂を食べたい!という欲求(報酬といいます)が脳で生じる、つまりおいしいからもっと食べたいと強く感じるようになります。(たばこのニコチンが体内で濃度が低下したら、「吸いたい!」と強い欲求が生じることと原理は似ています)(甘いお菓子を食べると、おいしいと感じてもっと食べたいという欲求が生じることと似ています)

「脂肪」や「砂糖」などの高エネルギー源は、人間が活きていく上でとても重要で有り、脳が本能的に欲しているようです。

つまり、脂自体がおいしいわけではないが、味覚ではなく脳が欲するためもっと食べたい(=おいしい)と感じさせるもの




最後に



この考察は、事実ではない可能性が十分にありえます。なぜなら、一つ一つ実験してデータを集めないと断言できないことばかりだからです。
例えば脂が回るかどうか確認するためには、同じ部位の脂肪の含有量を熟成前と熟成後に測定する必要があります。



魚の熟成はまだまだわかっていないことが多すぎます。何故なら、一つ一つの理屈を確認するためにはお金と時間が物凄くかかるため、誰も確認実験をやらないからです。美味しくなる方法が大事であって、背景の理屈は知りたいけど、確認するところまでは誰もしていない、という事が現状です。


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